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【外国人の社会保険加入・免除】よくあるお悩み・留意点

最近増えてきた外国人雇用。お悩みとしてよく上がる1つが社会保険です。こんな声があります。


  • すぐ辞める外国人社員が多いので、社会保険への加入免除が可能か知りたい

  • 社会保険への加入に難色を示す外国人社員をどのように説得すればよいか知りたい

  • 社会保険への加入にあたって、外国人社員ならではの留意点を知りたい


入社後のミスマッチや短期間での帰国、退職を経験したことのある受入側は、社会保険への加入に躊躇するケースがみられます。もしくは、給料からの天引き額増加や、将来帰国した場合の年金受給を心配する外国人側が、社会保険への加入に難色を示すケースもあります。


一方、日本は「国民皆保険制度」を採用しています。外国人を含む日本で暮らす全員が何らかの医療保険に加入しなければならず、社会保険もその対象の一つです。法改正により社会保険加入対象者は今後増えていく見込みです。


なお、社会保険には狭義(健康保険・厚生年金)と広義(健康保険・厚生年金および労災保険・雇用保険)の2種類の定義がありますが、本記事では狭義の社会保険について取り上げます。国民健康保険との比較も交えながら、外国人ならではの留意点も説明します。




目次[非表示]

  1. 1.社会保険とは
    1. 1.1.社会保険の中身、国民健康保険との違い
    2. 1.2.誰が社会保険に加入するのか
    3. 1.3.保険料はいくらなのか
      1. 1.3.1.社会保険に加入している時の保険料
      2. 1.3.2.社会保険に加入していない時の保険料
  2. 2.社会保険の加入をめぐって外国人からよくある質問
    1. 2.1.帰国したら年金はどうなる?
    2. 2.2.働いたのに給料が出ない?
    3. 2.3.保険料の免除・減額はある?
  3. 3.外国人が社会保険に加入するメリット
  4. 4.外国人が社会保険に加入するのに必要な手続き・書類
    1. 4.1.事業者が初めて社会保険に加入する時
    2. 4.2.外国人社員を採用する時
  5. 5.まとめ


社会保険とは

社会保険の中身、国民健康保険との違い

社会保険の中には、主に次の5つの保険や制度が含まれています。

  1. 健康保険(病気、けがへの備え)
  2. 介護保険(障害への備え)
  3. 厚生年金(老後への備え)
  4. 雇用保険(失業への備え)
  5. 労災保険(就業に絡む病気やけがへの備え)

上記1の健康保険は「国民健康保険」と「社会保険」の2種類に大別できます。国民健康保険は、公的な医療保険制度のひとつで、地方自治体が運営しています。加入者は自営業者や無職の人など、健康保険(社会保険)に加入していない人・できない人です。 一方、社会保険は、全国健康保険協会や各健康保険組合が運営しています。加入者は基本的に会社員(正社員の他、一定条件を満たした契約社員とパート社員)です。社会保険を運営している健康保険組合は、企業単体で作られたものや、業種ごとに集まって作られたものがあります。中小企業などは「協会けんぽ」と呼ばれる全国健康保険協会の健康保険に加入します。それでは上記1~3について詳細をみていきましょう。


誰が社会保険に加入するのか

社会保険加入対象者は下表の通りです。加入対象者になった場合は、個人側は加入を拒むことはできませんし、同様に、企業側が加入させないということもできません。加入対象者にも関わらず非加入と分かった場合には、事実が発生したときに遡って保険料が追徴されます。

※1 常用の従業員数=厚生年金の被保険者数 
※2 常用労働者の週の所定労働時間が40時間の場合(4分の3以上=30時間)
※3 常用労働者の所定労働日数が月20日の場合(4分の3以上=20日)
なお、従業員500人以下の事業所でも労使の合意が有り、500名以上の条件を満たせば加入可能 。


保険料はいくらなのか

社会保険に加入している時の保険料

今回は千葉県千葉市にある企業が全国健康保険協会に加入していると仮定してシミュレーションしてみます。まず社会保険料は、前述1.健康保険と3.厚生年金を足し合わせて算出されます。保険者の勤め先の所在地(都道府県)によって料率が異なるので、全国健康保険協会の保険料額表を併せて参照します。なお、40歳以上の人は1.健康保険と3.厚生年金に加えて、2.介護保険もかかります。計算ステップは下記の通りです。

【STEP1】 標準報酬月額を算出する

標準報酬月額=(控除前の)給与
※例:基本給 (21.5万円)+手当(0.9万円)+交通費(1.5万円)=標準報酬月額 (23.9万円)

【STEP2】保険料額表で等級を確認する

標準報酬月額23.9万円の場合、下表より等級は「19」と確認できます。

【STEP3】 年齢によって健康保険料がどちらに該当するか確認する

40歳の誕生日の前日が属する月から「介護保険第2号被保険者」に該当し、介護保険料が高くなります。

【STEP4】 社会保険料の本人負担額を確認する

企業と個人で負担を折半するので、「折半額」の列を確認します。最後に、健康保険と年金を足し合わせます。

出典:全国健康保険協会  令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)


社会保険に加入していない時の保険料

社会保険非加入者は国民健康保険に加入します。国民健康保険は、市町村により金額も請求項目(所得割、資産割、均等割…)も異なり、各市町村のホームページより保険料の試算が可能です。また、徴収回数は年10回と決まっています。社会保険と同様、40歳以上の人は介護保険料も含まれた形で支払います。なお、年金は国民健康保険とは別で、国民年金として徴収され、令和3年4月~令和4年3月分の国民年金保険料は一律月額16,610円です。


社会保険加入 VS  非加入(千葉県千葉市)

各市町村により、社会保険加入者と非加入者の保険料の差は異なります。一般的に社会保険料の方が高くなりますが、大きな差があるわけではありません


社会保険の加入をめぐって外国人からよくある質問

前述の通り、社会保険加入者と非加入者で月額保険料は大きくかけ離れていません。しかし、数年単位でみれば非加入の方が保険料は安く済むことから、抵抗感を抱く外国人は少なくありません。注意が必要な具体的事例と対応方法を紹介します。


帰国したら年金はどうなる?

病気・けがへの備えである健康保険は直近必要になる可能性があります。一方、老後への備えである厚生年金については、老後まで日本にいない場合、これまで納めた年金が無駄になるという不安から加入を疑問視する声があります。しかし、帰国後も年金を掛け捨てせずに済む方法があります


【社会保障規定】
自国の年金プログラムに日本での加入期間を加算可能な国があります。ただし、日本の年金を受給するには最低10年加入する必要があります。

対象国:ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、アイルランド、ブラジル、インド、フィリピン 等々 20カ国


【脱退一時金の請求】
6ヶ月以上10年未満納付の場合、脱退一時金を申請すれば日本で納めた年金を全額または一部受給可能です。社会保険加入者の場合は60~100%戻ってくるのに対し、非加入者は25~50%しか戻ってきません。


働いたのに給料が出ない?

月末入社の場合は要注意です。保険料は入社月から天引きが開始されます。保険料は「日割り」でなく「満額」なので、月末入社などで稼働日が少なく、当月の給料が少額でも、社会保険は満額差し引かれます。したがって、社会保険料が給料を上回る場合、給料が出ない上に本人が不足分を支払う事態となるので、不満の種になりやすいです。月初入社に調整するなどは1つの手です。


保険料の免除・減額はある?

国民年金と国民健康保険には、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業した場合など、経済的に困難な場合、申請が承認されると保険料の納付が免除または減額される制度があります。国民年金では、全額免除 /4分の3免除 / 半額免除 / 4分の1免除があります。国民健康保険の軽減率は各市町村によりますが、中には7割減額措置のある市町村もあります。一方、社会保険と厚生年金には、取得に応じた免除・減額の制度はありません。したがって、国民年金と国民健康保険で免除・減額の措置を受けている外国人社員は特に、社会保険への切り替えに極度の抵抗感を示しやすいです。説得には社会保障規定や脱退一時金に加えて、次に紹介する加入メリットを重点的に説明するようにします。


外国人が社会保険に加入するメリット

手取りが減ると懸念し、社会保険加入に難色を示す外国人社員に対しては、中長期的に得られるメリットを重点的に説明することで納得してもらいましょう。

① 扶養家族

社会保険は扶養家族がいる場合にメリットがあります。配偶者や子の年間収入が一定金額以下を条件に、1人分の社会保険を支払うだけで何人加入しても保険料は変わりません。一方、国民健康保険/国民年金は収入が0円でも加入義務があり、人数ごとに保険料・年金がかかります(ただし、免除・軽減の措置あり)。


② 傷病手当

社会保険の場合、標準報酬月額の2/3を1年半の間受給できます。国民健康保険/国民年金は受給の仕組みがありません。


③ 出産手当金

社会保険の場合、産前6週間(多胎14週)、産後8週間、標準報酬月額の2/3を受給できます。国民健康保険/国民年金は受給の仕組みがありません。


④ 産休/育休中の保険料免除

社会保険の場合、産休育休ともに保険料の納付を全額免除できます。一方、国民健康保険/国民年金の場合、産休に限って国民年金は免除されますが、その他免除はありません。


⑤ 保険・年金事業者負担

前述の通り、社会保険の場合、企業が保険料、年金ともに半額負担します。月々の国民健康保険/国民年金の保険料とかけ離れて大きく変わらない保険料を納めるだけで、老後基礎年金と老後厚生年金の両方を受け取れるので、老後の暮らしに余裕が出るでしょう。


⑥ 年金受給

厚生年金の場合、将来の年金受給額を増額する仕組みを利用可能です。「繰下げ受給」は、65歳から受給できる老齢基礎年金を、最長70歳まで遅らせることで、年金受給額を増額できる制度です。1年で8.4%、5年繰下げると42%も受給額が増えます。また、60歳で加入期限を迎える国民年金ですが、厚生年金なら最長70歳未満まで加入できます。厚生年金の受給額は、平均標準報酬額と被保険者であった月数をもとに計算されるため、働き続ける(=厚生年金に加入する)ことで受給額を増やし、さらには繰下げ受給の増額率にも反映されるので、大きく年金受給額を増額できます。




外国人が社会保険に加入するのに必要な手続き・書類

事業者が初めて社会保険に加入する時

下記書類を事業所の所在地を所轄する日本年金機構の事務所へ提出します(郵送・持参・電子申請など)。

●法人登記簿謄本の原本、もしくは事業主の世帯全員分の住民票の原本
法人格の場合、法人登記簿謄本を法務局で発行。個人事業主の場合、住民票の原本を市町村で発行。いずれも発行後90日以内のものを使用する。

●健康保険・厚生年金保険・新規適用届
日本年金機構のホームページでダウンロード、もしくは所轄の年金事務所で受け取りできる。


外国人社員を採用する時

●外国人雇用状況届出書
雇い入れ日の属する月の翌月末日までに、事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出する。

●健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
採用日から5日以内に日本年金機構へ提出する。

●健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
被保険者に被扶養者がいる場合は、事実発生から5日以内に日本年金機構へ提出する。扶養親族の居住地が海外でも不要条件を満たせば届け出可能。住所欄は国名の記載のみで良い。

●年金手帳再交付申請書
基礎年金番号をまだ取得していない外国人の場合は日本年金機構へ申請する。

●厚生年金保険被保険者ローマ字氏名届
個人番号と基礎年金番号が結びついていない外国人社員は日本年金機構へ提出する。なお、資格取得届を電子申請により手続きする場合に限り、資格取得届の電子添付書類として画像ファイル(PDF形式・JPEG形式)による提出が可能。

●第3号被保険者ローマ字氏名届
扶養家族も外国人の場合に提出する。

●在留カードの写し
サイズや白黒、カラーの指定は特にない。

●健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書
健康保険料・厚生年金保険料を口座振替によって納付したい場合に日本年金機構へ提出する。


まとめ

制度の話も多く、やや複雑だと感じられた方も少なくないでしょう。下記が簡潔にまとめた内容です。

  • 社会保険加入対象者になった場合、加入を拒むことはできないとともに、企業側が加入させないということもできません
  • 社会保険加入者と非加入者で保険料は、自治体によるがあまり大きく変わりません。日本に長く住む場合は社会保険がお得です。
  • 外国人が帰国する場合の年金の取り扱いについては、加入期間によるが、社会保障規定や脱退一時金の請求を検討できます
  • 社会保険への加入、国保からの切り替えに難色を示す外国人もいます。保険について詳しい人は日本人でも少ないので、メリットを丁寧に説明することが一番の近道です。


日本人でも難解な保険制度です。正しく理解し運用していくことで、コンプライアンスを守れるだけでなく、企業・外国人双方にとってメリットがあります。ただし、全員が加入するルールだからと説明を怠ると、外国人社員の不満の種となります。業務の中身だけでなく、社会保険のような周辺情報の提供も、外国人社員のモチベーションや定着に影響します。社会保険の加入をめぐっては、すれ違いが起こらないよう、外国人からよくある質問や加入のメリットなどを是非参考にしてみてください。


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