
【これで安心!】 外国人との面接で知っておくべきルールと質問テクニック
近年、日本で働く外国人は年々増加しています。新型コロナウィルスの影響もあり、入国制限により影を潜めている部分はありますが、それでも在留外国人の数は過去に見ない増加を見せています。
働く外国人が増えるということは、外国人を雇用する企業が増えたり、一つの企業に勤める外国人の数が増えたりと、受け入れている企業側にも変化が生まれています。その結果、外国人の採用や面接に関して多くの人事担当者が頭を悩ませることが多いかと思います。日本人と比べて、法的にも違う部分がありますし、文化の違いということで言えば、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きな勘違いを生んでしまうこともあります。
本記事では、下記のような人事担当者のお悩みに応えます。
- 外国人との面接がうまくいかない
- 外国人と面接時に聞いた話と、実際働いてからの様子が違う
- 外国人となると何を質問すればよいかわからない
- 外国人との面接でNGなことを知りたい
ますます増える外国人採用・雇用。中でも面接をするうえでの事前準備や心構え、さらには面接中に使える実践的なテクニックや質問方法などをお伝えします。
したがって、本記事を読むことで得られることは、下記の通りです。
- 外国人との面接に臨む前に知っておくべきルール
- 外国人との面接に臨む前に知っておいたら便利な外国と日本の文化の違い
- 外国人との面接中に使えるテクニック・質問方法
なお、記事を読むお時間がない方向けには外国人との面接ノウハウを凝縮した「面接チェックシート」がございます。ぜひこちらも合わせてダウンロードしていただければ幸いです。
目次[非表示]
- 1.外国人との面接に臨む前に知っておくべきルール
- 1.1.差別的発言はしてはならない
- 1.2.不法就労を見逃してはならない
- 2.外国人との面接に臨む前に知っておいたら便利な海外と日本の違い
- 2.1.コミュニケーションの違い
- 2.1.1.ハイコン・ローコンの違い
- 2.1.2.日本はハイコン、海外はローコン
- 2.2.就労観の違い
- 2.2.1.組織観:アメーバ型 vs ピラミッド型
- 2.2.2.キャリア観:就社 vs 就職
- 3.外国人との面接中に使えるテクニック・質問方法
- 4.具体的な質問・聞き取り例
- 5.まとめ
外国人との面接に臨む前に知っておくべきルール
外国人の採用や面接に臨む前に、必ず知っておくべき内容があります。それは差別や不法就労に関する考え方です。決して知らなかったでは済まされない内容になっています。
差別的発言はしてはならない
当然のことですが、差別はあってはありません。もっと厳密に言えば、日本の方で「差別的取り扱い」は禁止されています。しかし、何が差別になるのか、意外と知らないこともあります。
例えば、国籍を理由に不採用にしてはいけません。逆に言えば国籍での募集もしてはいけません。一方、英語や中国語など採用要件に使える言語を設けることは大丈夫です。仕事をするうえで必要なスキルを記載することは普通の採用と同じですね。
他にも宗教や政治を理由に不採用にすることもいけませんし、こうしたことを質問すること自体、差別と受け取られかねません。もちろん礼拝の時間・場所が必要かなどを確認することもありますが、このあたりは質問を避けた方が安全です。
不法就労を見逃してはならない
そもそも「外国人」は何によって定義されているのでしょうか?日本においては「出入国管理及び難民認定法」[福知1] (通称、「入管法」)によって細かく定義されています。詳細についてはこちらでは書ききれませんので、こちらの記事を見てもらえればと思いますが、ポイントだけかいつまんでご紹介します。
最も重要なのはビザ・在留資格(一般的にビザと混在されるので、便宜上ビザと記します)と在留カードの確認です。外国人が保有しているビザ、特に就労系ビザと呼ばれるものには取得条件がそれぞれによって変わります。ビザの切り替えも可能ですが、取得先のビザの条件を満たさなければ切り替えられません。また、在留期間もよく見落としがちなポイントです。日本人の運転免許証のように有効期間があり、その期限を超えて雇用しようとすると不法就労につながってしまいます。
外国人との面接に臨む前に知っておいたら便利な海外と日本の違い
ここからはより実践的な内容です。外国人と面接をしていく中で、「なにかかみ合ってないな」「面接でいいなと思って採用したけど全然イメージ違うな」ということを経験したことも多くいると思います。まず、ここではその背景にある海外と日本の違いについてお伝えします。
コミュニケーションの違い
ハイコン・ローコンの違い
みなさんもハイコン・ローコンという言葉は聞いたことあるのではないでしょうか?ハイコンテクストおよびローコンテクストの略称で、コミュニケーションの取り方の違いを表すものです。何が違うのか、それは言葉の持つ意味合いが異なります。違う言い方をすれば、言葉そのものの意味だけでなく、仕草を含めたノンバーバルや状況・背景を踏まえた文脈をどこまで取り入れるのか、を表したものです。そして、日本はハイコン、外国はローコン、と覚えると良いでしょう。細かくは諸外国によって異なりますが、日本と比較すれば、外国はすべてローコンと言っても差し支えありません。
日本はハイコン、海外はローコン
具体的に見ていきましょう。
日本では「阿吽の呼吸」「一を聞いて十を知る」という慣用句があるように、コミュニケーションの受信者側に、発信者の意図を汲みとるよう求めます。職場で「あれ、来週までにやっておいて」というような指示が飛び交うことは多いかと思いますが、日本人であれば「あれ=この前一緒に商談にいった案件Aのことだよな。違ったらよくないから確認しにいこう」「来週って言ってたけど、細かくチェックする人だから遅くとも水曜朝に一度送っておかないとな」など、受信者側が配慮します。
外国人はどうでしょう。「あれ、来週までにやっておいて」と言われたら、おそらく来週いっぱいギリギリまで報告は上がってこないのが多いと思います。なぜなら明確な期日・時間や案件名を伝えていないからです。ローコンの場合、コミュニケーションは発信者の責任者として考えられ、「伝わったことが全て」であると考えます。よく言われることですが、「わかってくれ」「察してくれ」というコミュニケーションスタイルは外国人相手では通用しません。
就労観の違い
組織観:アメーバ型 vs ピラミッド型
次に、日本人と外国人の組織観の違いについて見ていきましょう。
日本人の多くが慣れ親しんでいるのがいわゆるアメーバ型です。京セラ創業者の稲盛和夫氏が提唱した組織運営スタイルです。組織内の役割分担における境界線をあえて曖昧にすることで、間に落ちる仕事を双方で拾いあったり、もしくはお互いの仕事に対する意見交換をしたりします。いわゆる「全員で勝とう!」というスタイルですね。新卒を育てる、というのもある種、アメーバ型を表す考え方です。スキルが足りていない新人がいたとしても、他の社員でカバーする、育成する、ということです。
外国人の多くが慣れ親しんでいるのはピラミッド型です。組織内の役割を明確にして、境界線を曖昧にしない。さらには、お互いの仕事には干渉せず、あくまでその人・部署に任せます。逆に、任された仕事を他の人が助けるというのはご法度です。それは、仕事を任されるということは信頼の証であり、完遂することが会社から求められていると外国人は捉えます。仕事を助けられてしまうということは、スキルが足りていない、信頼されていない、と考えてしまう人もいます。
キャリア観:就社 vs 就職
次にキャリア観の違いについて見ていきます。
日本人は会社に就職する、という感覚が強いです。今でこそ終身雇用は崩壊したと言われますが、新卒採用を重視する企業も多いですし、一定のキャリアを一つの会社で築こうと考える日本人も少なくありません。これはまさしく会社という組織に所属する意識、組織への帰属意識が高いと言えるでしょう。日本人同士の自己紹介の際、「A会社で営業している田中です」というように、所属組織を最初に出すのは自然ですよね?また、新卒で入社し、異動を繰り返しながら様々なスキルを身に着けていく、というキャリアが多いかと思います。
外国人は職務、つまりポジションに就職する意識が強いです。例えば、マーケターとして就職したら、その道を究めようと考えます。新しいスキルが会社で得られない、マーケターの上位役職に上がれない、と判断したら、別の会社を探すことが通常です。キャリアとして、いかに自分の理想とするスキルを身につけられるのか、を重視する傾向があります。
外国人との面接中に使えるテクニック・質問方法
これまでは面接をする前に持っておくべきルールや知識を中心にお話ししてきました。ここからはより実践的に使えるテクニックや質問方法などについて、具体例と合わせてお伝えします。
テクニックその1: 数字やエビデンスなど客観的事実を確認する
外国人の中にはプレゼンテーションが上手な人がいます。これは商談の際はとても力強いですが、こと面接で言えば、本人の能力以上のことが誇張されてプレゼンされることになります。自己アピールのためにプロジェクト成功や売上数字について語る候補者も多いでしょう。こうしたサクセスストーリーは聞けば聞くほど「素晴らしい!」と感じるかもしれませんが、実際本人が貢献した部分は何か見えなくなることもあります。本人の具体的な役割やアクション、数字で言えばどこまで自身で積上げているのか、それは難易度としてどれだけ高いのか他者と比較する、など、客観的に把握できる数字やエビデンスを確認しましょう。意外にそこまで自身では取り組んでいない、ということは少なくありません。
テクニックその2:質問の意図・背景を伝える
前述のハイコン・ローコンであるのが、日本人面接官の質問の意図を理解しないで外国人側が回答することがあります。例えば「年収はいくらでしたか?」という質問の背景には「いくら欲しいと考えているのか含みを持って答えてほしい」と意図するかもしれませんが、ローコンであればその言葉の通り現職の年収を答え、希望年収は伏せる、ということがありえます。よくある悩みの一つの「実際採用してみたら違った」はこうしたすれ違いから生まれます。
シンプルにストレートに聞くことも良いですが、質問の意図や背景を伝えることも効果的です。例えば、本人の強みを見極めたい際に「あなたが直面した最大の難関を教えてください」と質問しても望んでいる回答は出てこないでしょう。「あなたの強みを知りたいので、強みが活かされた場面の中で、最大の難関だったものを教えてください」と質問したほうが、何を答えたらよいのかもう少しクリアになります。
テクニックその3:言動の裏にある価値観を把握する
必ずしもスキルが高い人が自社で活躍するとは限りません。また、先ほど書いた就労観の違いで言えば、長く働く意向がない可能性があります。そのため、外国人候補者の価値観や判断軸が、会社のそれとフィットするのかを確認することが有効です。キャリア形成やスキル獲得が弱いと感じたとしても、外国人社員自身が居心地の良いカルチャーなのであれば、定着する可能性は高いです。
では、どのように価値観を把握したらよいのでしょうか。
具体的な質問としては「なぜその行動を取ったのか」「その時の感情はなんだったのか」を聞くことが有効でしょう。例えば、「営業マネージャーとして売上拡大に向け、新規顧客の開拓に注力しました」という話が出てきたときに、「具体的に何をしたのか」「なぜそのアクションをとったのか」「その時の心境を教えてほしい」などを聞ききましょう。その人の判断軸や仕事をするうえでの価値観が見えてきます。
具体的な質問・聞き取り例
それでは実際の面接場面でどのように使えるか、具体的な質問例・やりとりを見ていきましょう。詳細はこちらの資料にありますので、ぜひダウンロードしてみてください。
まとめ
これまで外国人との面接で必要となってくる知識やノウハウ、質問方法などを紹介してきました。いかがでしたでしょうか。お伝えした内容を下記のようにまとめました。
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外国人との面接に臨む前に知っておくべきルール
- 差別的発言を防ぐため、国籍・宗教・政治にはなるべく触れない
- 不法就労を見逃さないよう、在留資格・在留カードを確認する
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外国人との面接に臨む前に知っておいたら便利な海外と日本の文化の違い
- コミュニケーション:ハイコン・ローコンによってやりとりの仕方が違う
- 就労観の違い:組織・仕事の考え方が違う
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外国人との面接中に使えるテクニック・ノウハウ
- テクニックその1:数字やエビデンスなど客観的事実を確認する
- テクニックその2:質問の意図・背景を伝える
- テクニックその3:言動の裏にある価値観を把握する
最後に。
外国人を面接・採用するとは言っても、あまり臆することはありません。法律として外国人を雇用する際の注意点や、異文化ならではのコミュニケーションや価値観の違いはありますが、大事なことは外国人応募者の本質をきちんと見極めることです。それは、日本人であっても基本は同じなはずです。「外国人だから日本人とは違う」「自分は英語が話せないからよくわからない」とならず、読者の方にはぜひ本記事を参考に前向きに外国人との面接に臨めることを期待しています。